金田一 清香
先進理工系科学研究科
建築学プログラム
准教授
低炭素化技術・エネルギーシステムを開発し社会実装する
冷房負荷の大きい温暖な地域で、多種熱源によるヒートポンプシステムを導入した建築物の性能と最適な運用方法を研究する
研究体制
私たちは、2020年度から4カ年の予定で、地中熱利用関係のNEDOプロジェクト(代表:北海道大学 長野克則教授)の委託を受け、西日本地域の実稼働建物における運転性能の測定や見える化を担当しています。早くから普及が進んできた寒冷地に比べて、西日本のような温暖地の実証データは未だ充分とはいえない状況です。地中熱をヒートポンプの熱源とする場合、冷房過多の条件では経年的に地盤温度が上昇することが危惧されます。私たちは、温暖地で地中熱ヒートポンプを定着させるために、最も重要なことは、適正な設計・施工はもとより、実は稼働後のマネジメントにあると考えています。このプロジェクトを通し、温暖地におけるサステナブルな地中熱利用の形態を明らかにします。
特色
広島大学は恵まれた環境や敷地を有しており、地中熱や貯留水などの有望な未利用熱にあふれています。一方で、全ての空調を未利用熱で行うことが得策ともいえません。欧州では、エアコンのような空気熱によるヒートポンプを含め、年間効率が一定以上の場合を再生可能エネルギーと定義しているように、熱源の特性を踏まえヒートポンプを上手く運用することが重要です。これまで既往研究は多々あるものの、持続的に省エネ効果を得るためのシステム全体の視点が不足しています。我々の研究では、建築側の利用形態を踏まえた多種熱源によるヒートポンプシステムの提案を通し、温暖地での未利用熱ヒートポンプの普及拡大に貢献します。
意気込み
カーボンニュートラルという重い課題に向けて、PVや地中熱ヒートポンプ等のハード面の増強と並び、使用者の行動を喚起するソフト対策を両輪で進めるために、広島大学全体の知の結集が必要です。研究や教育の質を低下させることなく、また“がまん”になることなくエネルギー効率を改善するには、各建物のエネルギー使用の凸凹を相互に補完する電気や熱のネットワークが有効ではと考えています。また、最新のセンサーやIT技術を取り入れながらも、使用者が建物や部屋のエネルギー的な特徴を能動的に感じ取ることが必要となります。コロナ禍により生活様式に変化が生じたように、カーボンニュートラルを契機とした新たなアクション“広島大学モデル”の確立に貢献できればと考えています。